ビーズキットのデザイン

ビーズ研究室

ここ数年は年間色違い・アイテム違いも含めて50~60パターンのビーズ作品をデザインしています。

「キット用(教材を含む)」「雑誌などへのレシピ提供用」「展示会用」「プライベート用」・・・自分がビーズ作品をデザインする時は、大きく分けて、4つのケースがありますが、ダントツで多い「キット用」デザインについて今日は綴ります。

ここ数年は「キット」を組むことを前提にデザインすることがほとんどになりました。
「プラベート用」デザインなんて久しくできていないかもしれません。
主宰しているnagomi*styleでは、教室の卒業生に希望があればビーズキットをデザイン制作してみることを勧めますが、「販売するため」そして「売れる」キットデザインは自由にデザインする時とは違うコツの様なものがありますので、必ずお伝えしています。

そんなことを下記備忘録的にまとめます。

材料について

他の3つのケースと決定的に違うのは、作品を構成する「材料」について制約があるという点です。使う材料は、なるべく品切れや廃盤になりにくい、定番商品の中から選び、キットが長く継続できることも優先事項の一つです。もちろん希少なビーズをセールスポイントに限定○個などと銘打って販売するのも一つですが、できれば長く継続できる定番商品をデザインすることを優先しています。
また企業からの依頼の場合は、新製品など必ず使わなければならない素材があったり、デザインと関係ないところで一番制約があるのが「材料」。
「材料」ありきでデザインし始めることも少なくありません。

種類について

多くても20種類以内に抑えたり、企業からの依頼の場合は「3種以内」など制限があることもあります。
キットを組む内職さんは「1袋○円」で契約していることが多いので、なるべく袋数を少なく、つまり材料を少なくする方がキットの価格も抑えられるということになります。

技法について

多くても1作品を構成するのは3技法以下を心がけています。例えばネックレスであれば、目立つ部分のセンターに技法を3つ入れたなら、ネック部分はただ通すだけのストリングにするとか、全体でバランスをとる様にしています。
キットデザインを始めたばかりの頃は、たくさん詰め込んだ作品の方が良かれと思い、あれこれと詰め込み、力技の様な作品を作っていましたが、レシピもどんどん複雑になり枚数も増えますし、作る側も最後まで完成しないでそのままになる可能性が高くなります。
デザイン、配色だけでなく、技法も絞った方が印象的なキット作品になると思っています。

例えばこちらの作品はセンターモチーフとネックレス部分の2つの部分から構成されていますが、センターのビーズボールがメインで先に決まり、ネックレスはどうしようか色々迷いました。

もしセンターのビーズボールが大きさ違いや目数違いなど少し変化させたものを繋げるのであれば、ネックレスは通すだけのストリングでも良かったかもしれません。今回は全く同じ目数で作れるビーズボールなのでネックレス部分に技法を入れても良いのかなと思い、難しくならない新しい技法を取り入れることにしました。

2目のネッティングチューブです。3目とか4目のネッティングチューブはよくありますが、2目は少し珍しいかもしれません。作り始めが編みにくいですが、5段めくらいから慣れると編み進む進度が早いのがメリットです。

ちなみにネックレス部分を決めるまでに新しい技法を試したり目数を変えたり4種類くらい試作しました。今回採用しなかった技法や試作編み地は試作引き出しにしまっておきます。そんな表舞台を待つ編み地がたんまりです。

所要時間について

そのキットが何に使われるかどうかで変化させます。
体験会トライアル様でしたら45分程度、初心者様用でしたら2時間まで、中・上級者様用なら逆に3時間以上とか・・・
今回は自分のオンラインショップの販売用でしたから上記の様な算段ですが、授業で使うキットであれば、実習時間を踏まえて段数や目数を減らしたりとより多くの制約が生じます。

アイテムについて

日本のビーズキットの市場で人気なのはなんといっても「ネックレス」です。
売れるとわかっているのは「ネックレス」ですが、少数派も大切にしたいので「ブレスレット」「リング」「ブローチ」「バッグチャーム」その他もラインナップする必要があります。
海外では体格が大きい方が多く、「ネックレス」にすると長く編まなくてはいけないのでおよそ半分の制作時間と労力でできる「ブレスレット」の方が逆に好まれると聞いたことがあります。

まとめるとキット作品を作る時は
「デザイン」と同じくらい
・材料
・種類
・技法
・制作時間
・アイテム
をどうするか

・・・それらを熟考しながら組み立ていく必要があります。

ルールという訳ではなく、経験から思い起こしてまとめたものです。
例に挙げたこの作品のデザインの完成度はさておき、
nagomi*styleでキットデザインをして行こうという卒業生やどなたかのヒントになれば幸いです。

そして今は「キット」を作ることに注力していますが、制約を気にせず、自分のために気ままにデザインすることを老後の楽しみに私もまだまだ発展途上です。

※1 作品を作るための材料と作り方(レシピ)をパッケージにしたもの。

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